原題は「ミュージックマン」。
アーメット・アーティガンは自らも生粋の音楽ファンだった。レコード会社をつくったのも、音楽ファンとして納得のいくレコードを世に出したかったという純粋な動機からだった。彼はミュージシャンに対しては誠意を持って接した。それらは、当時の音楽業界ではとても珍しいことで、初期のアトランティックレコードを特別な存在にした。
移り変わりの激しい音楽業界であるから、きれい事ばかりではすまない。会社が成長し、扱う商品が黒人音楽からロックへとシフトしていくなかで、共同経営者や古参ミュージシャンとのすれ違いも起こった。
しかし、社交好きで少し見栄っ張りなエピソードも披露されるこの人物は、それらの障害もひょうひょうと乗り越えていったようだ。成功するビジネスオーナーの、誇張のない一つの理想像が描かれていると言えるかもしれない。
R&B、ソウルファンとしてはオーティス・レディングらが所属したスタックスレーベルの話が興味深い。
ジャズ、ブルース、R&B、ロックいずれのジャンルでも数え切れないほどの名アルバムを世に送り出してきたレコード会社とそのオーナーの軌跡は、50年代から70年代までの黒人音楽とロックの歴史を、より身近に生き生きと感じさせてくれる。
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